犬の心配症状の一つ「下痢」について、ペットフーディストである筆者が解説していきます。
便の状態は犬の健康を知る重要な項目の一つです。
便秘よりも下痢に神経質になりがちですが、どちらも小腸または大腸の異常でありなんらかの原因があります。
まずは病院に行った方がよいかの基準をみてみましょう。
病院へ行く目安
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- 排便の回数がいつもよりかなり多い(4~8回)
- 排便回数が週に3以下である
- 便のニオイがいつもと違う(腐敗臭、酸臭)
- 便の色がいつもと違う(赤、黒、白、灰色、緑など)
- 便が常に細い、または平たい
- 便に血液がみられる
- 便に粘膜の付着が多く見られる
- 下痢が続いている
- 体重が減っている
- お腹がゴロゴロとなる
- 嘔吐を伴う
- 食欲がない
- 食欲旺盛だが体重が減る
- 水を飲まないのに下痢をする
- よだれを多く流している
- 腹部に張りがある
- 嘔吐、食欲不振を伴い祈りのポーズをする
- じっと動かず食べない
- 腰や背中に痛みがあるようだ
- 夜熟睡できていない
健康上問題がなく、食事が関係しているようなら次のような原因と対応策を考えます。
下痢の原因と対応策
一時的な下痢
考えられる問題点:草、土、枯れ葉、おもちゃのかけら等の摂取
対応策
・次の便まで様子を見る
・フードをふやかして水分量の増加で排泄をサポートする
考えられる問題点:消化不良
対応策
・食欲不振がなければ、通常量の食事を何回かに分けて与え、一度にかかる消化の負担を減らす
・通常量の1/2のフードを2倍の水分で充分にふやかし、3回に分けて給餌
慢性的な軟便
考えられる問題点:与える量が過剰
対応策
・給与量が多すぎないか現在の給与量からDER*を見直し、適正なDER*で給与量を計算し直す
考えられる問題点:水分量過剰
対応策
・1日に必要な水分量の目安を計算する
・フードに混ぜる水分量がフードの量の2倍以上にならないように減らす
考えられる問題点:食物繊維過剰
対応策
・フードに添加している野菜、芋類、果実を一旦除去。排便状態が改善したら全体量の1~2割を上限に与える
・もともと食物繊維量の多いフードに食物繊維源の食材を添加しないようにする
考えられる問題点:食物有害反応
対応策
・異なるタンパク質源、または加水分解タンパク質を利用したフードに切り替える
・現在使用しているタンパク質源と異なるタンパク質を使用した、原材料がわかりやすくシンプルなフードに切り替える
*DER…1日あたりのエネルギー要求量
DER=安静時エネルギー要求量(RER)×係数*¹で計算します。
安静時エネルギー要求量(RER)の計算方法
70×体重㎏⁰・⁷⁵
この計算を√機能のついた電卓で次のように押すと求めることができます。
体重(㎏)×体重(㎏)×体重(㎏)=√√×70
ライフステージやライフスタイルによって変わる「1日に必要なエネルギー量」に換算する目安です。
あくまでも目安になるため、体重測定を行い調整が必要です。
成犬の目安となる係数
維持期……………………1.0~1.8
避妊/去勢処置なし……1.6
避妊/去勢処置済み……1.4
活動量:少/肥満傾向…1.2
安静要求時………………1.0
まとめ
犬の下痢は健康状態を観察するのにわかりやすい指標の一つになりますが、その原因は様々です。
まずは健康上の問題がないかどうか、病院に行った方がよい状況であるかを判断しましょう。
健康上とくに問題がなく、食事に問題がある場合は原因を一つひとつ探っていき改善を目指します。
未消化物や食物繊維の量や種類が、腸の中を通過する時間や腸内細菌のバランスに影響してきます。
このバランスが体にとって不適切な時に下痢や便秘というかたちになって現れてくるのです。
あなたの大切なパートナーが少しでも早く快適で元気な生活に戻れるよう心から願っています。
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